冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
最終章 幸せの雨
帰宅後はこれからの予定が山積みだった。
匠馬の両親への報告、入籍、それにベビー用品の購入や食器類などもそろえる必要があった。いろんな順序がでたらめのため、基盤づくりから始めなければならない。
匠馬は澪の産後の体を気遣い、入籍以外は、のんびりやっていこうと言ってくれた。
だが澪はどうしても幸之助には報告に行きたかった。これまでたくさんお世話になり、そしてこれからは嫁としてお世話になるのだ。それに挨拶もなく入籍するなんて、澪の信念に反した。
そう訴えれば、一日でも早く入籍を済ませたい匠馬も納得してくれ、東京に戻って一週間。この日初めて三人でお出かけをした。
「澪、美雨をチャイルドシートに乗せたいんだが、どうもうまくいかない」
珍しく焦った口調に慌てて車を見に行くと、ぎょっとする場面に出くわした。
「匠馬さん! それ逆です!」
「逆? あぁ、どうりでおかしいと思った」
美雨を前後逆に乗せようとしていたのだ。
説明するとすぐに要領を得た匠馬は、手際よく美雨をチャイルドシートに乗せていた。そしてすやすやと眠る美雨を優しい眼差しで見つめていた。