冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
だがそんな喜和子も、美雨の存在を目の当たりして、これまでと違う感情を抱いたようだった。美雨を見るなり、手を伸ばしてきたのだ。
「そちらのお嬢さんは何カ月?」
「もうすぐ二か月です」
喜和子から声をかけてくるとは思わず、澪は内心驚いていた。
「ちょっと触ってもいいかしら」
「はい。もちろんです」
澪の腕の中ですやすやと眠る美雨を、おそるおそる抱き上げる。
「や、やわらかいわね」
そして物珍しそうに、観察していた。
「このお嬢さんは何を食べるのかしら」
「え?」
「ステーキはお好き?」
「えぇ?」
澪は思わず、変な声を上げてしまった。そんなやり取りを見ていた幸之助が白い髭をなぞりながら、あはははと笑っていた。匠馬はやれやれといった顔をしている。
「喜和子、赤ちゃんはミルクだよ」
「ミルク。それはどこに売ってるんですか?」
「どこかのお店にあるんじゃないのか?」
二人でなんともとんちんかんな会話をしている。喜和子は根っからの御嬢さんだとは聞いていたがここまでとは……。澪は驚いていた。