冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


おそらく二人とも、匠馬にミルクを飲ませることもしていないのだろう。

だが喜和子は美雨にうっとりとした視線を向け、それ以降、離そうとしなかった。他人に興味がないと言っていたが、美雨は別格だったのだろう。

そんな喜和子に苦笑いしながら、幸之助が澪に声をかけた。

「神谷さん、ちょっと扱いにくい息子だが、よろしく頼むよ。二人が一緒になってくれて嬉しいよ」
「会長……こちらこそ、よろしくお願いします」

澪は深々と腰を折った。

こんなふうに、快く受け入れてもらえるとは、澪は思ってもいなかった。順番は無茶くちゃ。公私混同も甚だしいのだから。

だがあっさりと許されたのは、澪のこれまでの行いのお陰だともいえる。自分に厳しく、人の優しく、そしてどんなことにも真摯に向き合う澪だったからこそ認められ、良い人たちに恵まれた。

これからはもらった恩や愛情を返しながら、匠馬や美雨を幸せにしたい。幸之助に会って、澪の中でその気持ちはさらに膨らんだ。

「よし。それじゃあ、めでたい席ということで、一つ舞をやるかの」
「親父。病み上がりなんだからやめておけ」



< 144 / 158 >

この作品をシェア

pagetop