冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
その日、幸之助に婚姻届けの証人欄に名前をもらい、その足で二人は婚姻届けを出しに行った。この日、二人はついに夫婦になった。
「やっとだな。澪、幸せにする」
「私こそ、匠馬さんを幸せにします」
本郷澪という名前が、なんだかくすぐったかったが、すぐに胸の奥がじわじわと温かくなった。
(本郷澪、本郷澪……ホンゴウミオ。どうしよう。嬉しい)
「どうかしたか?」
「いえ。ただ幸せすぎて」
匠馬がいて、美雨がいて、そして澪たち三人を見守ってくれている人たちがいる。こんなに幸せなことはない。
一時は、一生気持ちを隠して生きていくとばかり思っていた。そんな澪を、匠馬は信じ、諦めないでいてくれた。だからこそ、こんなにも愛しい感情に出会えた。
「もう他になにもいらないくらい」
「相変わらず欲がないな」
「だって、本当のこととですから」
匠馬はクスッと笑っていたが、否定はしなかった。
澪がいらないと言っても、匠馬はきっと澪に愛情を与え続け、あらゆるものから守りぬくだろう。そのくらい大きな愛に包まれている。
澪は今後、それを強く痛感するに違いない。