冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「あの、社長は……」
「俺のことは気にするな。いつも食事時間はばらばらで遅いことが多いんだ」

匠馬はいつも遅い時間まで仕事をしていて、ながらで食べることも多く、不摂生気味だということは、澪も知っていた。身体を壊さないか密かに心配している。

「では遠慮なくいただきます」

はむっと思いっきり頬張ると、肉汁がじゅわっと口の中で広がり、幸せな気持ちになる。肉まんを食べるのはすごく久しぶり。

その時ふと、誠のことを思い出した。お金に困っていると言っていたが、ちゃんとごはんは食べているのだろうか。なんの連絡もないということは、まさか……。

まがまがしいことが頭を過る。

「どうした? 嫌いだったか?」
「あ、いえ。そういうわけでは……」
「君はたまに悩ましい顔をする。もし何か困っていることがあれば、すぐに言え。手を貸す。君には感謝しているんだ」
「感謝、ですか?」

肉まんを持ったまま、キョトン顔で問う。澪には匠馬に感謝されるよう覚えが全くなかったのだ。

そんな澪を前に匠馬が、ぽつぽつと話し始める。

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