冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
第二章 一夜の花
冬の匂いが濃くなり始めた12月初旬。匠馬との関係は日に日に良好なものになっていった気がする。
匠馬が行く先々には必ず同行し、匠馬が無茶をしようとすれば澪が止めることもあった。段々と、よきパートナ―なれている気がする。
「社長、郵便物です」
コンコンとノックをすると中から「入れ」という声が聞こえた。
社長室は本店であるホテルの最上階にあって、その隣の秘書室で澪は仕事をすることが多い。郵便物も、必要なものそうでないものを選別し、匠馬に手渡す。呼ばれれば飛んでいくし、頃合いをみてコーヒーも淹れる。最近は匠馬好みのコーヒーを淹れられるようになり、褒められる度自信をつけている。
ここ本店は、地下鉄の出口より地下通路直通とアクセスも良く、好立地。優雅な雰囲気のエントランスを抜けると、広々としたロビーが迎えてくれる。客室はどの部屋からもシティビューが満喫できる設計となっている。
日本はもちろん、海外からのお客様も多い。
「そこに置いておいてくれ」
「はい」
「そうだ、神谷。この前言っていた交流会だが、参加しようと思う」
「そうおっしゃると思って、エントリーしておきました」
「さすがだな。ありがとう」
その言葉に澪は嬉しくなる。
来月、経営者が交流するためのパーティーが行われる。匠馬は迷っていたが、勉強熱心な人だ。きっと参加すると言うと思い、前もってエントリーしておいた。