冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
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パタンと閉まったドアの奥に消えて行った澪の後姿を見て、匠馬はふと思った。
今日は夕方から雨が降ると言っていたな、と。
もしかするとそのまま雪に変わるかもしれないとも言っていた。窓の外を見れば、雨雲が立ち込め、今にも雨が降りだしそう。
(それにあいつ、足を怪我していたな)
自分ももう帰るつもりでいるのだから、車で送ってやればよかったと今さらになって思い立つ。
匠馬にとって澪はどこか心休まる存在となっていた。真面目で、媚びることもなく、なんにでも一生懸命に向き合う。そんなひたむきなところを買っていた。それに、これまで匠馬の顔と財産で寄ってきた女性とは違う。
匠馬は女性に対してあまりいい思い入れがない。アメリカにいるときも匠馬を巡って、女性社員同士の血の争いが起こったこともあった。皆が皆、匠馬に気に入ってもらおうと、嘘や見栄を張る。それは物心ついたときからずっとだ。
だがそれも、人を見抜く目を持つ匠馬には通用せず、いつもあっさりとバレてしまう。だから匠馬はこれまで、女性と長続きした試しがない。
人の汚い部分をこれまで見すぎていて、匠馬は匠馬で、苦労しているのだ。