冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
だから匠馬に対し、愛想笑いの一つもしない澪の存在が心地よく、嬉しくもあった。最初はお堅すぎてどう扱っていいか悩んだが、最近は少し心を開いてくれるようになってきて、優越感のようなものを感じている。それに、この前笑った顔が匠馬の脳裏に焼き付いて離れない。
『ふふ、美味しい』
(あんなふうに笑えるのか)
じゃあ、楽しいことがあったときは、どんなふうに笑うのだろう。あのお堅いスーツを脱がせたら、どんな顔が見られるのだ。どんなふうに啼くのか……。もっと知ってみたいという男の本能も感じている。
(……って、秘書に対してなんて想像をしてるんだ、俺は)
自嘲気味に笑うと、匠馬はハンガーにかかったジャケットを乱雑にとり、澪の背中を追った。
「まだ間に合うか」