冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「林田さん、お元気だったんですね。よかったです」
そう言えば、誠は思いっきりばつの悪そうな顔をした。
「あの、全然連絡がとれなかったので心配してました」
そう言うも誠はキョロキョロと目を泳がするばかり。隣にいる女性も「誰?」と不思議そうに澪と誠を交互に見ている。
「あの、林田さん。どうして……」
そう言いかけたところで、誠に遮られた。
「さ、さぁ。知らない人。行こう」
(え?)
「俺はこんな不愛想で可愛げがない女なんて知らない」
そうきっぱりと言うと、誠は澪の隣を通り過ぎて行った。
(……知らない人って、どういうこと? ずっと心配してたのに)
「確かにお堅そう。まこっちゃん、守備範囲広すぎーって突っ込むところだったわ」
あははと二人の高笑う声が背後から聞こえる。澪はその場から動けず、呆然としていた。
知らない人呼ばわりされてしまった。自分は何かいけないことをしてしまったのだろうか。嫌われた? いや、初めから何も始まっていなかったのかもしれない。
誠のことは名前とアドレスしか知らない。連絡が取れなくなっても、家にいくことすらできなかった。
騙し取られた……やっとここで理解した。