冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


そんな場所で、匠馬はさっきから腕組みをし、まるで王様のよう。恐らく常連なのだろう。

匠馬が店に入った瞬間、店員が飛んできて深々と頭を下げていたし、オーナーらしき男性も、腰を低くして匠馬に声をかけていた。やはり彼は天下の本郷グループの御曹司で、正真正銘のセレブなのだろう。

「今度あるパーティー用だ。お前のことだ。どうせいつもの地味なスーツを着てくるだろうと思って」
「いつもそうしておりますが、ダメだったでしょうか?」
「俺の隣に立つんだ。綺麗でいろ。それに、せっかくだ。あらゆる方面に紹介しようと思ってる」
「わ、わかりました」

上司命令なら澪は決して逆らわない。

それに今回の社長交代で、すでに多くの人から注目を集めている。そんな彼が地味でさえない秘書を連れていたら、恥をかいてしまう。きっとそういうことだろう。

「神谷は足が綺麗だ。ひざ丈でもいいんじゃないか」
「もうアラサーです、いくらなんでも……」

さらっと褒められたのは嬉しいが、短いものはちょっと抵抗がある。

「まぁ時間はたっぷりある。好きなだけ試着したらいい」

そう指示する匠馬に澪は「はい」と、自信なさげに頷いた。



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