冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
結局、派手すぎず地味すぎずといった、いたってスタンダードなものに決まった。とはいえ普段の黒のスーツより断然可愛くて華やかだ。それに合わせパンプスも新調し、二人でお店をあとにした。
「あの、すみません。ありがとうございます」
「礼なんていらない。俺が好きでしている」
いいながら颯爽と街中を歩く。彼が歩くとかなりの確率で女性が振り返る。
今日はいつものスーツと違って、グレーのジャケットに、ライトチャコールのハイネックのセーターというラフな格好だがそれがすごく似合っていてかっこいい。シックな味わいなのに大人らしさを感じられる。
さらに、さらっとした髪が風で流れているのが、爽やかさを演出をしている。
「もう一軒行くぞ」
「え? どこへ?」
「ついてこい」
そう言って澪の手を引いた。ぎゅっと握られ、一気に体温が上がる。
(え……どうして、手を?)
「お前の手は小さいな」
「しゃ、社長が大きんですよ」
「そうか」
なぜか機嫌がよさそうで、顔には柔らかい笑みが浮かんでいる。