冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
そのまま近くの宝石店に着くと、匠馬は軽快な足取りで中へ入って行った。これまたたいそうなお店で、さっきのお店同様、店の人が匠馬をめがけ飛んできた。
「これはこれは、本郷様。ようこそおいでくださいました」
「ちょっと見せてもらう」
「どうぞごゆっくり」
(こんなお店で。名前を覚えられているって……)
たった数時間で舌を巻くことばかりだ。匠馬は嬉々した様子で店の中を見て回っていた。
まさかとは思うが、澪のために買おうとしているのか。澪はこわごわと、ショーケースに並べてある目をしかめたくなるような輝きを放つ宝石を見る。
「い! 一億!?」
思わず声が上がってしまった。見てはいけないものを見てしまったような気分だ。
「どうしたそんな声を出して」
「あ、いえ。失礼しました。ただあまりにお値段が……」
「あぁ、そんなことか」
(そんなことって……)
匠馬にとってはそうかもしれないが、澪にとっては、血眼になって働いても一生買えない金額だ。
「気に入ったのか? これにするか」
「な、なにをおっしゃいます。それに宝石なんて私は」
「いいだろう。俺が好きでプレゼントするくらい」
どうして一端の秘書に、そこまでするのか。