冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
そんな澪の背後から、匠馬が覗き込むのが鏡に映った。
「良く似合ってる」
「あの、でもけっこうですから」
「俺がつけててほしいんだ」
そう言うと匠馬は、これにすると指をさした。
その声に店員が慌てて伝票のようなものを出してきて、匠馬はそれにさらっとサインをしていた。
「行こう」
そして後日鑑定書と一緒に届ける形となった。
あっという間の出来事に、澪はついていけなかった。否定する間もなくあらゆることが勝手に決まってしまったのだ。
「あの、社長」
店を出て、飯でも食うかと言いながら辺りを見渡す匠馬に、澪は思い切って聞いた。
「どうした。それより足は大丈夫か? また靴擦れなんてことになってないか」
「それは大丈夫です。それより、私はどうやってお返ししたら……」
言葉じりを小さくしながら言えば、匠馬は澪の視線まで腰を屈めた。そして綺麗な瞳を向け、自信家の匠馬らしくない口調で言った。
「お前がずっと俺の傍にいると言ってくれればそれでいい」
「で、でも」
「俺がそれでいいと言ってるんだからいいんだ」
「もちろん、秘書として社長にずっと仕えるつもりです。社長のことはお慕いしてます」
「秘書として、か」
その言葉に、匠馬の顔に不服そうな影が差した。
だが今の澪にそれを察する余裕はない。いかにも高そうな宝石をプレゼントされ、どうお礼をしたらいいか、そのことで頭がいっぱいだった。