冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「なんの取り柄もありませんが、社長に認めてもらえるよう尽力いたします」
力説していると、匠馬が呆れたように鼻で笑った。そんな匠馬を澪はキョトンと見上げる。
「まぁ、とりあえずはそれでいいか」
「とりあえず……?」
「とにかく、俺はお前を手放す気はない。それだけは覚えておけ」
射抜いてしまいそうな力強さで澪に言い放つと、匠馬は再び歩き出した。
(つまり、少しは認めてくれたということだろうか?)
そう思うと、嬉しかった。
『君がいてくれてよかった』と、最初に掲げた目標に一歩近づけたようで胸が躍った。
これから先、何があっても匠馬についていこうと、颯爽と歩いてく背中に誓う。
芽生え始めた恋心を、心の奥にしまうことも同時に――