冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「俺の言葉が信じられないか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「とにかく、中に入れば自分の魅力がわかるさ。来い」
強引に手を引かれ会場内へと入る。
以前から澪を知っている人がいたら、笑われるのではないかとも心配していた。地味キャラがいくら着飾ったって無駄だって言われはいまいか……。
そんなネガティブな心境で中に入る。
会場内は立食形式になっていて、老若男女が食事や談笑を楽しんでいた。
その中には知っている顔もちらほら。
(あぁやっっぱり無理……!)
匠馬の隣で顔を伏せていると、さっそく年配の夫婦が声をかけてきた。
「本郷さん」
その声にハッとして顔を上げれば、前社長時代からお世話になっている大手自動車メーカーの社長夫妻だった。澪も何度か話したことがあった。
二人とも品があって、趣味であるクルージングの話をよく聞かせてくれた。夫のほうはおしゃれな白髭を生やしていて、スラリと背が高く、すでに酔っているのか顔が少し赤い。