冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
高峰が澪に気づき声をかけてきた。澪は頭を下げた。
「神谷です。ご無沙汰しております。高峰社長」
そう言えば高峰は不思議そうな顔をしていた。そんな高峰に澪は続けた。
「前社長のときからお世話になっております」
そういえば「あー!」と手を叩いた。
「なんか雰囲気変わったね」
まじまじとのぞき込まれ、つい強張ってしまう。高峰は昔からパーソナルスペースが近い。いつもぐいぐいと来るから苦手だった。
いつだったか、手相を見てあげると言われ手を握られたこともあった。
「へぇ、美人さんだったんだ。いつも黒のスーツとかだったよね? 良く似合ってるよ。うちに欲しいくらいだ」
冗談めかしに言うと、はははと高笑う。そして気が済むまで笑うと、また澪を舐めまわすように見始めた。
「品行方正って感じでいいね。うちの息子にどうだろう。な、母さん」
「あら、そうね」
妻のほうも、名案とばかりに頷いている。
(息子にって、どういうこと? まさか結婚相手にとか?)