冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「それはそうと、高峰社長」

どう対処していいかわからず困惑していると、匠馬が助け船をだした。

スッとさり気なく澪の前に手を出し、さがれといわんばかりの無言の圧力がかかる。

「新たな自動車の開発をなさっているとか」
「あーそうそう。今若者の車離れが進んでるだろ? それで新しく……」

ビジネスの話に持ち込み、興味をそらしてくれた。高峰はそれ以上澪に構ってくることはなく、ホッと匠馬の背中で安堵した。

それから何人もの経営者と挨拶を繰り返した。匠馬は次から次へと飲まされ心配だったが、それでも常に凛としていた。

「本郷さん」

今度は恰幅のいい男性が、手を上げながら近づいてきた。

「林田社長、お久しぶりです」
「長野にあるリニューアルしたホテル、盛況だってね」
「おかげさまで」

長野と聞いてピンときた。彼は大手和食チェーンの和(なごみ)フーズの社長だ。会うのは今日が初めてだが、何度かテレビでも見たことがあり見覚えがあった。

和フーズとタッグを組んだお陰で、長野のホテルは盛況と言ってもいい。恐らくこれから彼と携わる機会が増えるだろう。


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