冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


とはいえ、努力しないのは嫌いな性分。女手一つで育ててくれた光江を、早く安心させてあげたいと、最近婚活サイトに登録したのだ。

そして今日、その相手と会う日。彼と会うのは今日で3回目で、しかも大事な話があると言われている。澪は密かにプロポーズされるのではないかと期待していたのだ。

「今日はもうあがっていいぞ。お疲れさま」
「はい。では失礼します」

恭しく頭を下げると、社長室をあとにする。ロッカーに向かうさ中、澪は定時であがれてよかったと思っていた。

着替えを済ませると、ささっとお化粧直しをし、待ち合わせ場所であるコーヒーショップへと急いだ。

店に着くと、待ち合わせ相手である林田誠がすでに来ていて、席で待っていた。澪を見つけるなり、笑顔で手を振る。

「すみません、お待たせしました」
「ううん、今来たところ」

誠は今年30歳で、極々普通の会社員。ちょっと吊り上がった目に、ぽてっとした口元をしている。イケメンというわけではないが、しゃべり方が優しくて、待ち合わせ場所へは必ず先に来てくれている。そこが彼の魅力だと澪は思っている。


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