冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
会場にいるどこぞの令嬢が、匠馬をちらちらと見ているのに、澪は気づいていた。
「俺の言った通りだったろ?」
「え?」
「みんなお前を綺麗だと言っていた」
見上げれば得意げな顔をする匠馬の顔があった。
「き、きっとお世辞です」
早口になりながら、スーツの汚れをとんとんと叩く。
「そういえばあのネックレス、してないんだな」
「今日はビジネスの場ですので。一介の秘書があんな高価なものしていたら、不快に思われる方もいらっしゃいます」
「まぁそうだな。じゃあ今度二人きりの時に見せて」
突然腰を折ったと思ったら、耳元で囁かれぞくりとした。
しかもこんな場所にも関わらず、あの日のことを思い出してしまった。無意識にかぁーっと体が熱くなる。
あの日、匠馬はベッドの上で、澪が耳が弱いと知って執拗にいじった。薄い唇で甘噛みし、舌を縦横無尽に這わせた。
それだけで息絶え絶えになり、自分が自分でないような感覚になった。
「どうした。顔赤いぞ」
「す、すみません」
あたふたしながらバッグにハンカチをしまう。そんな澪を見て、くすくすと笑っている。どうやら、からかわれたようだ。