冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
おいでおいでと手招かれるが、澪は躊躇していた。この男を信用してもいいのか? またなにか企んでいるのかもしれない。
「ほらほら早く。こんなところで立ち話してたら、勘違いされるよ?」
その言葉に澪はハッとした。匠馬に見られるのだけは避けたい。ここはさくっとお金を返してもらって、全てリセットしよう。誠との縁をすっぱりきれるチャンスだ。
「わかりました」
そう答えれば誠はエレベーターホールへと向かい始めた。
「あの、どこへ」
エレベーターの中で澪がおずおずと問う。
「部屋だよ。今日ここに泊まる予定だったから」
それを聞いてじわりと手汗が滲んだ。まさか連れ込もうとしてるのだろうか?
いやいくらなんでもそんなこと……
そんなことを考えている間にも、部屋へ続くロビーに着いた。
「こっちこっち」
嬉々した様子で誠が足を速める。澪はその後を着いて行った。
部屋の前に着くと、誠はカードキーで部屋を開け、どうぞと促した。
「いえ、私はここで待ってますので」
「探すの時間かかりそうだから、入ってよ」
「ここで結構です」