冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「やめてください」
引きはがそうと抵抗するも、一歩ずつ部屋の中へと近づいている。まったくといって敵わない。
「離して……っ」
「ほら、黙って言うこと聞けって」
ずるずると引っ張られ、部屋の奥にあるベッドが目に入った。
(この男とだなんて絶対に嫌だ)
のこのことついてきた自分が馬鹿だったと後悔するも遅かった。徐々に追い込まれ、気力が失われていく。と、その時。
「手を離せ」
ふと、知っている香に包まれた。それと同時に痛みから解放された。見上げれば、匠馬が澪を抱え込むようにして、誠から引き離していた。
「社長……!」
「大丈夫か」
「は、はい」
目がじわじわと潤み始める。
「うちの秘書をどうするつもりで」
「あ、いやその……飲み直そうかなって話になって」
「明らかに嫌がってましたよね。合意の元ですか? うちの秘書は仕事中にふらふらと飲みに行ったりしないはずですが」
地鳴りがしそうなほどの低い声に、澪まで足が竦んだ。