冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
たっぱのある匠馬に上からすごまれた、大の大人の男性でも縮み上がってしまう。そのくらい貫禄がある。
「だ、誰に口きいてると思ってるんだよ。俺は和フーズの社長の息子だぞ。お前の会社がどうなっても知らないからな」
「好きにしたらいい。お前みたいな社員がいる会社とはこっちから願い下げだ」
「なっ……!」
匠馬の反撃が意外だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。おそらく、誠は匠馬がどこの社長でどういう人なのか、知らないのだろう。無知とは怖い。
「ッチ、覚えてろよ」
舌打ちをこぼし、誠は逃げる様にして部屋に入っていくと、中で「くそっ」と叫んでいた。
誠の姿が見えなくなった瞬間、澪はホッとため息をついた。でもこんなことになって大丈夫だろうかと、不安になった。あれでも一応取引先。会社に、匠馬に迷惑がかからないだろうか。
「大丈夫か、神谷」
「はい。すみませんでした」
「それよりあの男」
匠馬が鋭い目つきでドアを睨む。
あの時の男と、同一だということに気づいたのだろう。