冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


見れば有名店の和菓子の箱だった。ここは水まんじゅうが人気で澪も好きだった。だがやはり食欲がない。いつもなら飛びつくところなのに。

「ありがとうございます。でもちょっと食欲ないので遠慮しておきます」
「あらそう」

あっけらかんと言って、一花は澪の前の席に着く。

本当にどうしたというのだろう。自分の体のことなのに、まるで他人に操られているかのよう。

「そうそう、さっきサイトでちょっと嫌なもの見ちゃったんだけどさ」

一花が不安げな声で話しかける。

「嫌なものですか?」
「これこれ」

スマホを差し出され見てみると、旅館のやホテルなどの評価をするサイトが表示されていた。

「岐阜にあるうちのホテルのレビューなんだけど、ひどくない?」

一花に言われ目を走らせれば、そこには暴言ともとれるひどい書き込みがあった。

『スタッフの感じが悪い』
『部屋に虫がいて不快だった。二度と泊まらない』
『お風呂が汚い。最悪』

などと、低評価のレビューが続いていたのだ。

「ちょっとショックよね。今までこんなことなかったのにね」


< 64 / 158 >

この作品をシェア

pagetop