冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
見れば有名店の和菓子の箱だった。ここは水まんじゅうが人気で澪も好きだった。だがやはり食欲がない。いつもなら飛びつくところなのに。
「ありがとうございます。でもちょっと食欲ないので遠慮しておきます」
「あらそう」
あっけらかんと言って、一花は澪の前の席に着く。
本当にどうしたというのだろう。自分の体のことなのに、まるで他人に操られているかのよう。
「そうそう、さっきサイトでちょっと嫌なもの見ちゃったんだけどさ」
一花が不安げな声で話しかける。
「嫌なものですか?」
「これこれ」
スマホを差し出され見てみると、旅館のやホテルなどの評価をするサイトが表示されていた。
「岐阜にあるうちのホテルのレビューなんだけど、ひどくない?」
一花に言われ目を走らせれば、そこには暴言ともとれるひどい書き込みがあった。
『スタッフの感じが悪い』
『部屋に虫がいて不快だった。二度と泊まらない』
『お風呂が汚い。最悪』
などと、低評価のレビューが続いていたのだ。
「ちょっとショックよね。今までこんなことなかったのにね」