冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「何かの間違いでは。うちはスタッフ教育にも力を入れてますし、清掃だってきちんとしているはず」
「私もそう思うんだけどね。でもこんなこと書かれた以上、上は放っておかないだろうし、お客さんも鵜呑みにしちゃうわよね」
一花は悩まし気に水まんじゅうを頬張っていた。
次から次へ、どうしてこんなことが。これも誠の仕業なのか。匠馬が知ったらどう思うだろう。澪は社長室をちらっと見て、憂わし気な嘆息を吐いた。
それからというもの、明らかにわざとととれる低評価のレビューが書き込まれ続けた。それは全国にある50を超える本郷グループのホテルに満遍なく。
もちろん匠馬の耳にも入り、そのおかげで匠馬は仕事に忙殺された。社内もピリピリとしたムードが漂い、ホテルの従業員の退職も相次いだ。
そんなある日、フロントの前を通ると、男性の罵声が聞こえてきて、澪は思わず足を止めた。