冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「そちらの御嬢さんも気を付けた方がいいですよ。彼の言っていることは嘘です。彼のお父様はお元気です」
女性は「え? そうなの? 危なかった」と言って慌てて席を立ち、帰って行った。それを見た誠は、キッと鋭い目で澪を睨んだ。
「ったく、何だよこの前から。うっざ」
「今度見かけたら警察に突き出します。それと、私は必ずあなたからお金を取り返しますので、そのつもりで。それでは」
抑揚のない声で淡々と言うと、その場を後にする。だが誠はよほど悔しかったのか、澪を呼び止めた。
「ほんと可愛くないよね、君。最初は俺と結婚したくて必死だったくせに」
澪はむっとしながら振り返る。確かに澪も悪いところはあった。だけど今はそれも反省している。
だから、誠からお金を取り返すと言ったものの、実はもう水に流してしまおうと考えていた。
「あの社長さんの入れ知恵? もう乗り換えたんだ。尻軽だね~」
大きな声で言われ、かぁっと顔に熱が集まる。他の客も何事かと言わんばかりに澪たちを見ていた。