冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
それなのに、ついヒートアップしてしまった。匠馬を悪く言うのが許せなかったんだ。
「社長は悪くありません。私の独断です」
「尻軽なのは否定しないんだ。うける」
開き直ったように高笑う。相手にするだけ無駄だったか。澪はクールダウンするように大きく深呼吸すると「失礼します」と言って、立ち去ろうとした。
だが次の言葉で足元から凍り付いた。
「君こそ気を付けた方がいいんじゃない? 完全に遊ばれてるよ」
「え?」
「だってあの社長さん、ネクストファーマの令嬢と結婚するんだってさ。残念だったねー。やっぱあんたって選ばれない女なんだよ」
(結婚? 社長が?)
「あれ、その顔は知らなかったって顔だな。うちの親父も知ってたし、あの界隈ではその噂でもちきりだぜ」
誠は嬉しそうに頭の後ろで腕を組み、澪をニヤニヤと見ている。だが、耳が真空になったいみたいに、誠の言葉が入ってこない。
(こんなの、今咄嗟に思いついた嘘だ……。だってあのとき、社長は確かに言ってくれた。澪が好きだって……)
「社長さんにおめでとーって伝えておいてよ」