冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
ひゃひゃっと笑う誠の声を背に、澪は店を飛び出した。きっと虚言だ。それに、匠馬の口からきくまで信じない。
澪は涙がこぼれそうになるのを堪えながら、夜の街を足早に歩いた。
翌日、澪は腫れぼったい目で出社した。
あれから眠れず、ぐるぐると同じことばかり考えていた。匠馬が結婚……。
確かにパーティーでネクストファーマの若林という女性は、匠馬を気に入っていたように見えた。それに、上流階級の人たちにとって結婚はビジネス。それをよく知っている澪にとって、やはり事実ではないかと思わずにはいられなかった。
それに会食は今日。澪は来るなと言われている。つまり……。
「おはよー」
「あ、おはようございます。赤羽さん」
「あれ? なんか目腫れてる?」
「そ、そうですか? あ、昨日、映画見ながら泣いてしまったせいですね」
慌てて言い訳すれば、一花はふーんと、首を傾げていた。
「え? どうされました?」