冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「ううん、ただ最近神谷さん雰囲気変わったよね。前はちょっと堅くて近寄りがたかったっていうか。恋でもした?」
「そ、そんなんじゃありません!」
茶化すように言われ慌てて手を左右に振る。
だがいくら否定しても顔が真っ赤で、一花はなにか察したような笑みを浮かべていた。
(もしかすると、妊娠したから? 妊娠すると、顔つきが柔らかくなると雑誌に書いてあったし)
「そういえばさ、専務に聞いたんだけど」
一花が急に姿勢を低くしたと思ったら、キョロキョロと室内を見回した後、澪に耳打ちをしてきた。
「常務がさ、社長の退陣を求めてるって。それでこの前緊急役員会議があったらしいよ」
「え?」
「ほら、常務は前社長の弟でしょ? 今の社長が就任したことをよく思ってなかったんじゃない? で、代わりに自分の息子を社長にしたいみたいなのよ。きっとこの時を待ってたんでしょうね。あーお金持ちって怖い怖い。争いごとにならなきゃいいけどねぇ」
一花はそう言って、やれやれと言わんばかりに、天井を仰いでいる。