冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
その傍らで澪は、青ざめていた。
常務の息子。つまり匠馬の従弟にあたる。今、その従弟は、常務の下で働いていて、絵にかいたようなボンボンで、あまりいい噂は聞かない。
「だから社長は少しでも自分の周りを強固にしたくて、ネクストファーマの御嬢さんとお見合いをすることにしたんでしょうね」
「え? お見合い?」
「今日、会食なんでしょ? つまり、お見合いでしょ」
やっぱり誠が言っていたことは本当だったんだ。
(嫌だ、信じたくない)
「経営者も大変よねー。会社のために結婚するなんてさ。考えられないわ……って、ちょっと、どうしたの!? 大丈夫!?」
澪はショックを隠す余裕さえなく、目から大粒の涙を流し、終いにはへなへなと座り込んでしまった。
突然泣き出した澪を見て、一花が慌てふためいている。でももう止めることができなかった。
(社長が結婚してしまう……私以外の人と……)