冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「アンドロイドとか言われていた頃が嘘みたいだな」
「え?」
「最近表情が柔らかくなった。いい顔してる」
それは一花にも言われた。誰かを好きなったり、守りたいものができると、内部から見えない何かがでるのかもしれない。匠馬が澪を女にしたことも大きいだろう。
それらが固く閉ざした澪の心を、溶かしてくれた。意識して変えられなかったものが、無意識に変化している。不思議なものだ。
「で、話って?」
匠馬がズバッと切り出した。その途端、澪の手に汗がにじみ始める。
「はい。今日はお時間いただきありがとうございます」
「まったくお前は。堅苦しくなるな」
匠馬はナイフとフォークを置くと、澪を見ながら困ったように笑っている。その笑顔を前にすると、彼が好きだと肌で感じる。ずっとこの人の傍にいたいと。けれど……。
「あの日、好きだと言ってくださり嬉しかったです」
「……そうか」
「ですが、私は社長とはお付き合いできません。その旨をお伝えしたく、今日こうやってお時間をいただきました」