冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
ビジネスの話はよくわからない。けれど、匠馬が社長でい続けるには、強固な盾が必要だということはわかる。澪はその盾を持っていない。つまり、彼女の力が匠馬には必要ということだ。
この数日、眠れなくなるほど考えた。悩んで、悩んで、悩みぬいた。結局出した答えは、匠馬と離れることだった。
「俺は澪が好きだ。他の誰でもない、お前が欲しい」
「……っ」
心を鬼にしなければ、きっとこれ以上は持たない。泣いてしまえばそれまでだ。澪はぎゅっと唇を噛み、決然と言った。
「私も社長が好きでした」
「じゃあ、どうして」
「私は社長が社長だから好きだったんです。でもそうじゃなくなるのであれば、ただの人。名誉も地位もない匠馬さんには興味がありません」
「なっ……」
じりじりと胸が焼け焦げていく。こんなふうに傷つけたくはなかった。けれど、これがきっと正しい。
「これ、お返しいます」
澪はもらったネックレスを匠馬にすっと突き出した。匠馬は目を見開き驚いていたが、すぐ眉間に皺を寄せそれを拒絶した。
「返さなくていい」
「わかりました。じゃあ質にでもいれます。お話はそれだけです。失礼します」
「待て、澪!」