冷徹弁護士の独占欲にママとベビーは抗えない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
辞めたくなんてない。


「文句だけは一人前の役立たずが」


捨て台詞をはいた園田部長は、私をにらみつけてからカフェを出ていった。


「ひどい……」


尾崎さんを放っておけなくて抗議に至ったが、浴びせられた言葉に顔が険しくなる。

私は役立たずなの?
着実に売り上げを伸ばしているのに?

園田部長の発言が、彼の痛いところをついた私への反撃だとわかっている。
しかし、退職まで勧められて動揺で混乱していた。


「あの、大丈夫ですか?」


しばらく放心していると、スーツ姿の背の高い男性に話しかけられて我に返った。


「あ……。すみません、大丈夫です」


なにが大丈夫なのかさっぱりわからないが、とっさにそう返す。


「お話が聞こえてしまったもので。元気を出してください」
「ありがとうございます」


まったく知らない人に親切にされて、涙腺が緩みそうになる。

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