冷徹弁護士の独占欲にママとベビーは抗えない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「馬場さん、会社を辞めるそうだ」

「そうか……。悪いことをした」

「いや。お前に感謝してたよ。親父さんをひとりで矢面に立たせたこと、ずっと後悔してたって。こんな会社にしがみついてたなんてバカだったと、しみじみこぼしてた」


馬場さんも残業の嵐を駆け抜けてきたのだろう。

父だけでなく、誰にでも過労死の危険があったのだ。


「事務所に戻るか?」
「悪いけど、アポイントがあるんだ」


そう言うと、九条は鼻で笑った。


「なるほど。七緒さんによろしく」
「気安く七緒の名前を呼ぶな」
「嫉妬深い男は嫌われるぞ」


彼が軽く手を上げて去っていく。


「嫌われねぇよ」


小声でつぶやく。

嫌われないように気をつけるからな。
なんて、七緒に出会うまでは誰かにそんな感情を抱いたことがなかったのに。

俺を変えたのは、間違いなく七緒だ。

今日の口頭弁論で、俺を信じると言ったせいで肩身の狭い思いをすることになった七緒の名誉も守れただろうか。
< 330 / 342 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop