冷徹弁護士の独占欲にママとベビーは抗えない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「ケーキでも買って帰るか」
それだけで心配をかけたお詫びにはならないのはわかっている。
彼女には一生かけて感謝を伝えていくつもりだ。
なんて言ったって、彼女は俺の幸福の女神だからな。
外に出ると、ぽつぽつと雨が降り始めた。
「親父、お袋。これで許してくれるか?」
早くに亡くなった親父のことは、残念ながら記憶にあまり残っていない。
ただ、亡くなったあの日は雨が降っていて、お袋の泣き声が家中に響いたことは、いつまで経っても忘れられない。
だから雨は嫌いだった。
「俺、前に進んでもいいか?」
空に向かって問いかける。
今まで苦手だった雨が、細い銀糸が天から降りてくるかのように美しく感じるのは、俺の心に余裕ができたからかもしれない。
これは、俺が新しい一歩を踏み出す記念の雨だ。
傘をさす気になれない俺は、駐車場まで濡れながら進んだ。