桜色オレンジ
「…んっ」
紫花ちゃんが僕の服の袖を掴んだ。
「かな、くんっ…」
「……えっ?」
病室のドアが開く音がして慌てて振り向くと、そこに立っていたのは───
「桃花ちゃん…?」
「…お邪魔してごめんなさい。」
そう言って桃花ちゃんは走っていってしまった。
追いかけようとしたのに紫花ちゃんに腕を掴まれてしまった。
「奏くんっ、どうして追いかけようとするの?!
2人はもう別れたんでしょ!?」
「あ…」
そうだ、僕と桃花ちゃんはもう別れたんだ。
今更追いかけたところで、何を話すんだろう。
「奏くん、少しずつでいいから私のことも見てよ」
「…うん」
桃花ちゃんを、諦めなきゃいけない。