桜色オレンジ




「椎名さん好きな人いるの?」


「…」


「椎名さーん」


「…」


「……無視すんなよ、桃花」


「…っ!」



急に名前で呼ぶとか、ずるいよ。



「やっとこっち向いた」



桜庭くんは右の口角だけ上げてニヤリと笑っている。
まるでわたしが向くことを最初から分かっていたかのように。



「え、もしかして今おれ睨まれてる?」


「…あのことは言わないからわたしに話しかけないで」


「うんうん、で、好きな人いるの?」



だめだ、この人全然人の話聞いてない。
好きな人を知られたらそれを良いようにわたしのことを利用するに決まってる。



「い、ない」


「嘘だね」


「嘘じゃない、ほんと」


「だれ?この学校にいる人?」


あーあもう会話が噛み合わない。どうしよう。


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