桜色オレンジ
「はい、じゃあこれ湯たんぽ。少しは良くなるといいな」
「ありがとう」
すぐ行ってしまうと思っていたのに奏橙くんはベッドの横の椅子に座った。
「それでさっきの話なんだけど…、桜庭は悪い噂も聞くから関わらない方がいい。」
「悪い噂?」
「……ひとけのない路地裏で殴り合いしている、とか実は暴走族の仲間だった…とか。クスリをやっている、とも聞いたことがある。」
えぇ……それってかなりヤバいんじゃ…。
「それに、家庭環境も良くないらしい。そのせいでグレて色々やっているって聞いたよ」
"家庭環境も良くないらしい"
その言葉に一瞬、息が詰まった。
わたしの家も、環境がいいとは言えない。
でも奏橙くんはそれを知らない。
「…そ、うなんだ。」
「桃花ちゃんに何かあったら嫌だから、さ」
「…」
それはほんとうにわたしの為を思って言っているの?