桜色オレンジ





しばらく沈黙が続いたあと。



口を開いたのは奏橙くんだった。




「…桃花ちゃん、あの事考え直してくれた?」


「あのこと…って?」



なんのことかは、分かってる。
だけど、聞きたくなかった。



「僕と、もう一度付き合ってもらえませんか」




ぐらっと視界が揺れる。
普通好きな人にこんなこと言われたら嬉しいはずなのに。



わたしは無言で首を振った。



「…紫花ちゃんがあんな事になってしまったのは僕のせいだけど、僕が好きなのはずっと桃花ちゃんだけなんだよ」



─── 紫花 (すみれ)



わたしの双子の、姉。




「…奏橙くんとは、付き合えない。」


「どうして?……もしかして紫花ちゃんに何か言われてるの?それなら僕から……」


「ううん、違うの。わたし、の好きは、憧れの好き……だったから。奏橙くんの好きとはちがう……」



奏橙くん、悲しそうな顔してる。
でも、これしかないの。



「…、じゃあ好きになってもらえるようにがんはる」



そう言って奏橙くんは保健室から出ていった。
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