桜色オレンジ
缶に口を付けてから気付いてしまった。
ジュースはこの1本だけ。
つまり、桜庭くんのジュースが、ない。
「桜庭くんの、ジュースは?」
「別に椎名が飲んでるやつ貰えばいいでしょ」
それってつまり……
「…間接キス」
「別に今更気にすることでもないでしょ、キスした仲なんだし」
「…最低、せっかく、学校で心配してくれた事とか、さっき助けてくれたことお礼言おうと思ったのに。」
「じゃあ今言ってくれてもいーよ?」
「もういい!」
そう言ってジュースをもう一度ぐびっと飲む。
言ってたとおり、搾りたてのような感じですごく濃い。
「美味しいでしょ?」
わたしの顔を覗き込んで優しく笑う桜庭くん。
桜庭くん、そんな表情もするんだ…。