桜色オレンジ




さっきまで桜庭くんの右側に座ってたから全然気付かなかったけど、左耳に桜のピアスが付いていた。



「ん?あぁ、これね。中学の時に親友と一緒に買ったやつ」


「へ、へぇそうなんだ…"桜庭"だから、桜のやつなの?」


「そう、親友も名前に"桜"が付くから、2人で付けてんの」



親友の話をしている時の桜庭くん、なんだか嬉しそう。
きっとそれだけ仲がいいってことだよね。


「普段は、付けてないよね」


「うん、放課後と休みの日しか付けてないよ」


「優等生じゃなくなるもんね」


「うっせ」



あれこれ話をしているうちにあっという間に駅に着いてしまった。



「今日は本当にありがとう、また明日」


「…」


「桜庭くん?」


「おれ、煙草やめるわ。だから…椎名が持っててくれる?」


ポケットから黒い小さなポーチを出して渡された。



「じゃあ、またあした」



わたしが聞く隙も与えてくれないまま、電車のドアが閉まった。


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