影がいるから私がいる
足を一歩踏み入れた瞬間に、りっちゃんはその場に止まってしまった。


何があったのだろうと思い、りっちゃんの肩越しに部屋の中を見てみた…。


部屋の中には、老人が一人…生きてるのか死んでいるのか…それすらも分からない状態で座っていた…。


私たちはその老人に声を掛ける事も出来ずに、その場に立ち尽くしてしまった…。


「…誰じゃ…?深羅村はすでに村長の儂しか居らん…。
用が無ければ立ち去るがよい…。」


「え…?」

目の前に居る老人の言葉に私は驚いた…藍那の村長の父から聞いた話では、人口が五十人程の静かな村のはずなのに…。


訳が分からず、私は深羅の村長に尋ねてみた。


「そんな…村長である父から聞いていたのとあまりにも違います…。
一体深羅村に何があったんですか?」


私の疑問に、村長は怪訝な表情を見せた。


「村長…?君達は何処の者なんだね…?
神留無?瑪衣(めい)?それとも詩蘭(しらん)かね…?」


村長の言葉に、私は首を横に振った。


「いえ、藍那村なんです。」

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