影がいるから私がいる
私が家に帰ると、夜遅いにもかかわらずお父さんが起きていた。


「お父さん、ただいま~。」


私が言うと今気付いたかのように、


「今帰ったのか。遅かったな。」


「うん。淕くんと会ってたんだよ。」


お父さんの前では「りっちゃん」とは言わないんだ。
以前に言っちゃった事があって、そしたらお父さんがあからさまに不機嫌になったから、それ以来りっちゃんの事をお父さんの前では淕くんって言うようにしたんだ。


「そうか…お前たちはもうすぐ二十歳になるな…。」


お父さんの言葉に私は聞かれた訳ではないけど、何となく答えていた。


「うん、そうだよ。
三月後の十三日に二人共二十歳になるよ。」


そう!何と私とりっちゃんは同じ日に生まれたんだ~。

これはもう運命としか言えないよね。


「海希…明日大事な話があるから、相賀君を家に呼んでくれるか?」


お父さんの頼みに疑問を感じながらも、私は頷いた。


「うん、どっちにしても淕くんもお父さんに話があるから家に来るって言ってたよ。」


私がそう言うと、お父さんは「分かった」とだけ返してきた。
相変わらず口数が少ないんだから。


「それじゃあもう寝るね。おやすみなさい。」


お父さんは仕事の書類に目を通しながら、手を上げて応えた。

…今度は喋りもしなかったよ…。
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