明日にかける橋
「風邪をひいてしまうよ。」
 驚いて顔を上げた彼女の前に、優しい目をしたおじいさんが、微笑みながら立っていました。
 差しかけられた傘はとても大きくて、並んで座った2人を、すっぽりとつつみこんでしまうほどです。
そしてキラキラと光る虹色の傘の中は、落ち着いた静けさが漂っていて、外の激しい雨音さえも、まるで気にならないのでした。
 こうして2人で静かに座っていると、ずっと前から知っていたような気持ちになるのはなぜでしょう。
暖かくて、穏やかな雰囲気のせい?
それともおじいさんの吸っている、パイプのにおいが懐かしいからなのかもしれません。ポワポワと漂う煙に誘われるように、彼女は話始めていました。
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