明日にかける橋
・・トン・・・ポトン・・・・ポトン・・・。
 雨音が、また傘をたたき始めました。その音に、ハッと我にかえると、彼女はあわてて立ち上がりました。
「知らない人に、こんなことを話すなんて、私、どうかしているわ。ほんとにごめんなさい。」
 ペコリと頭を下げると、そのまま逃げるように、背中を向けたそのときです。
「まあ、お待ちなさい。」
 低くて、静かな声でした。
「そんなにあわてなくても、雨はもうじきやみますよ。」
 まるでその声の響きに押されたように、ストンと彼女は腰を下ろしました。 
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