ダメな彼女でごめんなさい
「翔くん……」

電話をかけてくれたのは、結衣の高校の同級生である浪川翔(なみかわしょう)だ。翔とは三年間同じクラス、しかも部活が一緒だったため仲良くなった。大学と就職先は違ったものの、お互いの会社が取引関係にあり、時々会えるようになったのだ。

「もしもし」

不安定な気持ちの中、誰かから電話をもらうのは嬉しい。結衣はすぐに電話に出ていた。声が震えてしまい、今にも泣きそうになる。

「結衣ちゃん、彼氏のインスタ見たよ。すぐ家に行くから」

結衣が答える前に電話は切れる。しかし、結衣の心は温かいままだ。疲れや悲しみが和らいでいく。

翔は結衣が悲しんでいる時、いつも家に駆け付けてそばにいてくれる。そして家事を一緒にしてくれるのだ。

「結衣ちゃん!」

電話から数分後、翔が呼び鈴を鳴らして家に来てくれた。走ってきたのか、汗を拭うその姿に結衣は涙をこぼしてしまう。

「ごめんなさい、来てくれてありがとう……」
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