ダメな彼女でごめんなさい

壱成は料理をしない。そのため、お米の炊き方すら知らないのだが、結衣の作った料理によく口を出してきた。

「お前さぁ、女だろ？もっとマシなもん作れよ。俺の友達なんかすごいぜ？お前もこういうの作れよな〜」

そう言い壱成が見せたのは、壱成の女友達のインスタだ。そこには手間ひまをかけないと作れない凝った料理たちが並んでいる。朝から夕方まで働いている結衣は、時間の都合上作れないものばかりだ。

「ごめんなさい。こういうの、作れるってすごいね。でも仕事があって……」

「言い訳すんなよ。女ならこういうのパパッとできるのが当たり前なんだからさ！」

おいしい、そう彼の口からその言葉が出ることはなく、結衣は食事を作るのが億劫な時もあった。でも今、目の前で翔は「おいしい」と言いながら食べてくれる。

結衣は泣きそうになるのをグッと堪えた。翔といると、些細なことで嬉しくなって泣きそうになるのだ。

翔は夕食の後片付けも一緒にしてくれた。そして、「何かあったらまた来るよ」と言い帰っていく。