【短編】代筆の恋 –お嬢様のふりをして婚約者に手紙を書いています–
私は、恋をしていた。
顔も知らない「エリオット様」という文通相手に。
ちょっと悪戯っぽく笑う顔は、こうだったらいいな、と思っていた「エリオット様」とは違ったけれど、――それでも、私が好きになった「エリオット様」は……いや、ニコラスさんは素敵な人だった。
「私も! 私も、書きます。お話ししたいこと、たくさんあるんです!」
メアリー様のふりをした私ではなく、ありのままの私をもっと知ってほしい。
今度こそは心を込めて結びの文を書けるだろう。
親愛なるニコラスさんへ。
ケイトより。愛を込めて――と。