【異世界恋愛小説コンテスト奨励賞受賞】娼婦に婚約者の第二王子を奪われ、すべてを失った令嬢は、復讐のため第一王子と結婚して王妃になる。
試験勉強
エリスとクロードは廊下から室内に移動していた。
「編入試験と言っても、難しく考える必要はありません。筆記と実技、そして形式だけの面接。たったこれだけです。さらに、ハーバード侯爵家の推薦状付きですので、まず不合格になることはないでしょう」
「だったら……」
エリスは思わず安堵の言葉を漏らしてしまった。
「今、何とおっしゃいましたか?」
クロードはそれを決して聞き漏らすことはしなかった。
「え! あ、あの……それは……」
「ハーバート侯爵家が推薦状を出すのです。それ相応の成績を取らなければ、ハーバート侯爵家に泥を塗ることになります」
「では、一体、何点取れば……」
エリスがおずおずとクロードに尋ねると、
「満点です。満点以外あり得ません!」
とクロードは言い切った。
「満点……?」
「ええ。簡単でしょう? 王妃になることに比べたら、こんなに楽なことはありません!」
「……」
エリスはこっそりとクロードの顔を見上げていたが、本気で満点が取れると信じて疑っていない様子だった。
「それに、この私が三か月間、直々に指導するのです。満点以外の点数などあり得ますか?」
「……」
クロードの勢いに押されているエリスを尻目に、クロードは続ける。
「確かに……いきなり男子校への編入試験の話を聞かされ、『満点を取れ』と言われても驚くのも理解できなくありません」
エリスは大きく頷いた。
「よろしい。では少しばかり安心できる話をしておきましょう」
「まず、筆記試験についてですが……、ここへ来る前に、奥様から成績表を見せていただいたのですが、本番で実力が発揮できればまず大丈夫でしょう。次に実技ですが……剣術のご経験は?」
「剣術ですか? 剣を握ったことがある程度です。ほんのさわりだけ」
「ほう。貴族のご令嬢にしては珍しい」
クロードが珍しく感嘆の声を上げた。
「うちは私と妹しかいないので……父の考えで、たとえ女の身であっても、最低限自分の身は自分で守れるようにと。護身術を一通りやった程度です」
「それはお父上に感謝しなくてはいけませんね。ならば、剣術の稽古により多くの時間を割くことにしましょう」
「はい……」
エリスは、剣術も護身術も特に嫌いではなかったが、どうして父であるスチュアート伯爵が、エリスたち姉妹にそのようなものを学ばせているのか不思議に思っていた。
エリスの友人たちの中には、スチュアート家のように娘しかいない家の者も複数名いた。しかし、誰一人として剣術や護身術を学ばされている者はいなかった。むしろ、エリスや妹がそのようなことをやっていると知ると、大いに驚かれた。
だから、エリスは、父は特別に変わり者なのだろうと考えていた。それに、父はとても息子を欲しがっていたと聞く。本当は息子にしてあげたかったことを、娘にしていたのかも知れない。
だがその父も、娘が、男装して男子校に潜入を試みていると知ったら、驚きを隠せないだろう。
「編入試験と言っても、難しく考える必要はありません。筆記と実技、そして形式だけの面接。たったこれだけです。さらに、ハーバード侯爵家の推薦状付きですので、まず不合格になることはないでしょう」
「だったら……」
エリスは思わず安堵の言葉を漏らしてしまった。
「今、何とおっしゃいましたか?」
クロードはそれを決して聞き漏らすことはしなかった。
「え! あ、あの……それは……」
「ハーバート侯爵家が推薦状を出すのです。それ相応の成績を取らなければ、ハーバート侯爵家に泥を塗ることになります」
「では、一体、何点取れば……」
エリスがおずおずとクロードに尋ねると、
「満点です。満点以外あり得ません!」
とクロードは言い切った。
「満点……?」
「ええ。簡単でしょう? 王妃になることに比べたら、こんなに楽なことはありません!」
「……」
エリスはこっそりとクロードの顔を見上げていたが、本気で満点が取れると信じて疑っていない様子だった。
「それに、この私が三か月間、直々に指導するのです。満点以外の点数などあり得ますか?」
「……」
クロードの勢いに押されているエリスを尻目に、クロードは続ける。
「確かに……いきなり男子校への編入試験の話を聞かされ、『満点を取れ』と言われても驚くのも理解できなくありません」
エリスは大きく頷いた。
「よろしい。では少しばかり安心できる話をしておきましょう」
「まず、筆記試験についてですが……、ここへ来る前に、奥様から成績表を見せていただいたのですが、本番で実力が発揮できればまず大丈夫でしょう。次に実技ですが……剣術のご経験は?」
「剣術ですか? 剣を握ったことがある程度です。ほんのさわりだけ」
「ほう。貴族のご令嬢にしては珍しい」
クロードが珍しく感嘆の声を上げた。
「うちは私と妹しかいないので……父の考えで、たとえ女の身であっても、最低限自分の身は自分で守れるようにと。護身術を一通りやった程度です」
「それはお父上に感謝しなくてはいけませんね。ならば、剣術の稽古により多くの時間を割くことにしましょう」
「はい……」
エリスは、剣術も護身術も特に嫌いではなかったが、どうして父であるスチュアート伯爵が、エリスたち姉妹にそのようなものを学ばせているのか不思議に思っていた。
エリスの友人たちの中には、スチュアート家のように娘しかいない家の者も複数名いた。しかし、誰一人として剣術や護身術を学ばされている者はいなかった。むしろ、エリスや妹がそのようなことをやっていると知ると、大いに驚かれた。
だから、エリスは、父は特別に変わり者なのだろうと考えていた。それに、父はとても息子を欲しがっていたと聞く。本当は息子にしてあげたかったことを、娘にしていたのかも知れない。
だがその父も、娘が、男装して男子校に潜入を試みていると知ったら、驚きを隠せないだろう。