【異世界恋愛小説コンテスト奨励賞受賞】娼婦に婚約者の第二王子を奪われ、すべてを失った令嬢は、復讐のため第一王子と結婚して王妃になる。
試験開始直前
「もうすぐ到着しますから、このくらいにしておきましょう。本当はもう一回くらいやっておきたいところですが」
結局、エリスは一睡もしなかった。
最初は試験に対する緊張で眠れなかったのだが、クロードから渡された問題集をやり始めると、ますます眠れなくなった。
こんな状況で問題を解いているせいだろうか? 意外と問題が解けず、エリスは焦ってしまったのだった。
(クロードは満点を取れと言っているけど、こんな調子だと満点どころか……合格も危ないかも)
エリスの不安はますます大きくなっていくのだった。
「私は手続きをして参りますので、このままお待ちください」
クロードは、エリスを馬車に残し、校舎内に入っていった。
順調に行けば、ここがエリスの新たな生活の場となる。
(男子校なんて、上手くやって行けるかしら……)
そんなことを思いながら、エリスは馬車の窓から校舎を眺めていた。
今日は休日ということもあり、学校の敷地内に生徒の姿は見当たらない。編入試験が行われるということで、校舎に近づかないように言われているのかもしれない。
編入試験が行われる日ということで、エリス以外の受験生もいるかと思ったが、それらしき人の出入りも全くうかがえない。
「お待たせいたしました」
クロードに声をかけられ、エリスは我に返った。
「あ、ああ……もう用事は済んだのか?」
「ええ。これから試験場にお連れ致します。私についてきていただけますか」
エリスは頷くと、クロードに続いて馬車を降りた。
外観からして大きな校舎だと思っていたが、中に入ってみると、その広さは想像以上であった。
(こんなに広いと迷ってしまいそう……)
エリスがきょろきょろとあたりを見回していると、
「ちゃんとついてきてくださらないと、迷子になりますよ」
とクロードがエリスに注意を促した。
エリスが小走りでクロードに追いつくと、今度はクロードの後ろにぴったりとくっつくようにして歩き始めた。
歩き出してから、エリスはあることに気がついた。
初めて来た場所だというのに、クロードには、道に迷う気配が一切感じられない。
「クロード、もしかしてここに来たことがあるの?」
エリスは抱いていた疑問をクロードにぶつけてみた。
「はい?」
「えっと……さっきから全然道に迷っている様子がないから……」
「主人が生活するかも知れない場所です。内部がどうなっているか完全に把握しておくのは当然のことです」
「そう……」
相変わらずの完璧さにエリスは黙るしかなかった。
「着きましたよ。こちらです」
クロードはとある部屋の前で立ち止まった。
「ここから先は、アーサー様お一人でお入りください。私は待合室で待機しておりますので」
結局、エリスは一睡もしなかった。
最初は試験に対する緊張で眠れなかったのだが、クロードから渡された問題集をやり始めると、ますます眠れなくなった。
こんな状況で問題を解いているせいだろうか? 意外と問題が解けず、エリスは焦ってしまったのだった。
(クロードは満点を取れと言っているけど、こんな調子だと満点どころか……合格も危ないかも)
エリスの不安はますます大きくなっていくのだった。
「私は手続きをして参りますので、このままお待ちください」
クロードは、エリスを馬車に残し、校舎内に入っていった。
順調に行けば、ここがエリスの新たな生活の場となる。
(男子校なんて、上手くやって行けるかしら……)
そんなことを思いながら、エリスは馬車の窓から校舎を眺めていた。
今日は休日ということもあり、学校の敷地内に生徒の姿は見当たらない。編入試験が行われるということで、校舎に近づかないように言われているのかもしれない。
編入試験が行われる日ということで、エリス以外の受験生もいるかと思ったが、それらしき人の出入りも全くうかがえない。
「お待たせいたしました」
クロードに声をかけられ、エリスは我に返った。
「あ、ああ……もう用事は済んだのか?」
「ええ。これから試験場にお連れ致します。私についてきていただけますか」
エリスは頷くと、クロードに続いて馬車を降りた。
外観からして大きな校舎だと思っていたが、中に入ってみると、その広さは想像以上であった。
(こんなに広いと迷ってしまいそう……)
エリスがきょろきょろとあたりを見回していると、
「ちゃんとついてきてくださらないと、迷子になりますよ」
とクロードがエリスに注意を促した。
エリスが小走りでクロードに追いつくと、今度はクロードの後ろにぴったりとくっつくようにして歩き始めた。
歩き出してから、エリスはあることに気がついた。
初めて来た場所だというのに、クロードには、道に迷う気配が一切感じられない。
「クロード、もしかしてここに来たことがあるの?」
エリスは抱いていた疑問をクロードにぶつけてみた。
「はい?」
「えっと……さっきから全然道に迷っている様子がないから……」
「主人が生活するかも知れない場所です。内部がどうなっているか完全に把握しておくのは当然のことです」
「そう……」
相変わらずの完璧さにエリスは黙るしかなかった。
「着きましたよ。こちらです」
クロードはとある部屋の前で立ち止まった。
「ここから先は、アーサー様お一人でお入りください。私は待合室で待機しておりますので」