【異世界恋愛小説コンテスト奨励賞受賞】娼婦に婚約者の第二王子を奪われ、すべてを失った令嬢は、復讐のため第一王子と結婚して王妃になる。
知られてしまった正体
エリスが目覚めたのはベッドの上だった。
起き上がろうとすると、ルードヴィッヒに止められた。
「もう少し横になっていた方がいい」
「あの……何があったのでしょうか……?」
状況が理解できていないエリスは、ルードヴィッヒに尋ねた。
「俺が帰って来た時、君はバスタブの横で倒れていたんだ」
「!」
そう言われて、エリスは、自分が素っ裸にタオルを巻かれただけの状態でベッドに横たわっていることに初めて気がついた。
(先輩に裸を見られた……!)
正体を知られたことよりも、裸を見られた方が、エリスにとっては大問題であった。
(私の裸、変じゃなかったかしら……?)
エリスは、顔だけを横に向けて、おそるおそるルードヴィッヒの方を見た。
すると、ルードヴィッヒも気まずそうな顔をして、エリスから顔を背けていた。
無言のままの時間がどれくらい流れたのかわからない。
だが、エリスもいつまでも裸でいるわけにはいかなかったので、意を決して、ルードヴィッヒに話しかけようとした。
すると、ルードヴィッヒの方が先に、
「すまない、見るつもりはなかった……」
と口火を切った。
――やっぱり見られていた。
「……いえ。こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ありません」
エリスは、消え入りそうな声で礼を言った。
そして二人は再び、短い間沈黙した。
次に沈黙を破ったのはエリスだった。
「あの、このことは――」
「ああ、わかっている。誰にも言うつもりはない。二人だけの秘密にしよう」
ルードヴィッヒは、エリスが言いたかったことを察してくれたようで、全て先に言ってくれた。
「……ありがとうございます」
とりあえずエリスは、一安心することができた。
自室まではルードヴィッヒが送ってくれた。
あんなことがあったせいか、道中、二人は終始無言であった。
ルードヴィッヒとしては、色々と聞きたいこともあっただろうが、エリスを気遣ってか、何も聞いて来なかった。
いつもよりも長く感じる道のりを経て、二人は目的地にようやく到着した。
「どうもありがとうございました」
エリスが自室に入ろうとすると、
「待ってくれ」
とルードヴィッヒに呼び止められた。
エリスは、何を聞かれるのだろうかと身構えた。どんなごまかしも、ルードヴィッヒには通じないだろう。
「君の……君の本当の名前を教えて欲しい」
意外、かつ簡単な質問に、エリスは拍子抜けした。
「……エリスです」
本来なら、教えるべきことではない。しかし、<エリス>という名はありふれた名前であり、教えても特に問題はないと考えた。
「エリスか。いい名前だ」
起き上がろうとすると、ルードヴィッヒに止められた。
「もう少し横になっていた方がいい」
「あの……何があったのでしょうか……?」
状況が理解できていないエリスは、ルードヴィッヒに尋ねた。
「俺が帰って来た時、君はバスタブの横で倒れていたんだ」
「!」
そう言われて、エリスは、自分が素っ裸にタオルを巻かれただけの状態でベッドに横たわっていることに初めて気がついた。
(先輩に裸を見られた……!)
正体を知られたことよりも、裸を見られた方が、エリスにとっては大問題であった。
(私の裸、変じゃなかったかしら……?)
エリスは、顔だけを横に向けて、おそるおそるルードヴィッヒの方を見た。
すると、ルードヴィッヒも気まずそうな顔をして、エリスから顔を背けていた。
無言のままの時間がどれくらい流れたのかわからない。
だが、エリスもいつまでも裸でいるわけにはいかなかったので、意を決して、ルードヴィッヒに話しかけようとした。
すると、ルードヴィッヒの方が先に、
「すまない、見るつもりはなかった……」
と口火を切った。
――やっぱり見られていた。
「……いえ。こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ありません」
エリスは、消え入りそうな声で礼を言った。
そして二人は再び、短い間沈黙した。
次に沈黙を破ったのはエリスだった。
「あの、このことは――」
「ああ、わかっている。誰にも言うつもりはない。二人だけの秘密にしよう」
ルードヴィッヒは、エリスが言いたかったことを察してくれたようで、全て先に言ってくれた。
「……ありがとうございます」
とりあえずエリスは、一安心することができた。
自室まではルードヴィッヒが送ってくれた。
あんなことがあったせいか、道中、二人は終始無言であった。
ルードヴィッヒとしては、色々と聞きたいこともあっただろうが、エリスを気遣ってか、何も聞いて来なかった。
いつもよりも長く感じる道のりを経て、二人は目的地にようやく到着した。
「どうもありがとうございました」
エリスが自室に入ろうとすると、
「待ってくれ」
とルードヴィッヒに呼び止められた。
エリスは、何を聞かれるのだろうかと身構えた。どんなごまかしも、ルードヴィッヒには通じないだろう。
「君の……君の本当の名前を教えて欲しい」
意外、かつ簡単な質問に、エリスは拍子抜けした。
「……エリスです」
本来なら、教えるべきことではない。しかし、<エリス>という名はありふれた名前であり、教えても特に問題はないと考えた。
「エリスか。いい名前だ」